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クリ・縄文人の性 2005年3月3日


  信州の考古学者藤森栄一の「古道」という本に、

  興味深い話が、書かれている。

  彼の学生時代というから、戦前の話である。

  彼は、信州の山で、不思議な集団にであった。

  出会いの瞬間は、クリの花のにおいの立ち込める

  夕まぐれのことだった。

  「あたりは、まだ、夕べの光がかすかにただよっていた。
  見上げると、その匂いのもとは、私の踏み込んだ林の
  暗い梢から、白い房のように垂れ下がっている栗の花だった。
  私は、そのふしぎな匂いの中にまよいこんだ」

  彼は、そこで、クリの木の下で絡まりあう男女に出会う。

  彼らは、男10人女7人のキコリの集団だった。

  なんと、彼らは、九州の肥後からやってきたのだという。

  藤森栄一の洞察力のすごさは、ここからである。

  彼は、この思い出から、遠く縄文人の性のバイオリズムに

  思いをいたす。

  「栗の花は男の精、クルミの花は女の精の匂いがする。
  女たちは栗の花の花粉の舞う草原で力いっぱいからみあい、
  噛んだりわめいたりして、受精する」

  「クリとクルミの木に囲まれて生きていた中期縄文人、
  クリの花咲くころ、彼らの性が強く刺激されたとすれば、
  女は夏の端境期は食欲が減退しても、
  秋の実り、冬の狩猟と、妊婦の食欲は頂上に達して、
  休養期のあける四月が、格好な出産期となる。
  とすれば、美しい明るい沢にのぞんだ、クリやクルミの
  林の下草の中に、愛の場があったとしたらどうだろうか」

  藤森栄一の飛翔する想像力に、めまいを感じながら、

  次のことは確実に言えそうだ。

  少なくとも、戦前あるいは戦後の一時期まで、

  縄文人の存在を強く強く感じさせる集団が、日本列島の

  山の尾根を行き来していた可能性があるのだ。

  今かれらの姿は、太古の森の奥に掻き消えたかに見える。

  でもそれは、本当だろうか。

  日本列島のどこかにその面影をとどめてはいないか。

  

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by kitanojomonjin | 2005-03-03 12:46 | 縄文