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根室メルヘン(1)不思議な歯医者さんのこと2005年9月24日

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(ブロギニストの散歩道から)

秋風が吹き始めると、なぜか北海道の東端の港町
根室のことを思い出す。

根室は、不思議な街だった。
人口の割りに、教会とジャズ喫茶店が多かった。
ゆきどまりのようで、意外にポッカリ世界が広がって
いるようでもあった。

そこに飄然とたどり着く人も、面白い人がいた。
なによりも、そこに住んでいる人が魅力的だった。

今でも忘れられない。
この街に小男の歯医者さんがいた。
ほれた女性と駆け落ちをしてこの街にやってきた
という話だった。
相手の女性は、とっても大女だったが、歯医者さんは
フーフー言いながら、彼女をおんぶしてこの街に
やってきたという。
ほんとかどうかは分からない。
でも、あの歯医者さんだったら、やりかねない雰囲気があった。

その歯医者さんが、ルノワールばりの油絵を描く。
それが、はがきの4分の1大の小さな小さな絵だった。
でも、とっても味わいのある絵だった。

一度、お会いした時、一生懸命、年賀状のあいさつ文を
推敲していた。
不思議な文章だった。

「ある日、両手の中に、自分の頭蓋骨が
すっぽり収まることに気が付いた。
人間を長くやってきたが、これに気づいたのは、
はじめてだ。」

たしか、そんな文章だった。

自分で、両手で頭を覆ってみるが、そんなにすっぽりは
収まらない。
あの歯医者さんは、よっぽど頭が小さかったのか
手が大きかったのか。

そんなことより、年賀状の冒頭、ずばり自分を客体化した
話からはじめるということに、とても強烈な印象を受けた。

お医者さんの科学者の論理と、絵を描く芸術家の感性が
奇妙に融合して、独特の世界をかもしだしているようにも
思えた。

話は飛びすぎるかもしれないが、画家鴨居玲の絵に
登場する人物のようだった。

根室の港町にたどり着く人々は、すべての虚飾を
そぎ落とし、人間存在そのものを見つめる人が
多いのかもしれない。


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by kitanojomonjin | 2005-09-22 19:05 | 旅の街角から