津軽の詩人・月永亜夢の
「初冬港」という作品。
シュールでかわいた感性がいい。
初冬港
もっとも沖を越えて この世の果てから
白金のカモメは打電してくる
せつなく稚い存在の歌をこめて すでに
凍っているいちまいの海
名づけがたく寒いものに囲まれて
焚火をする痛い情念の掌(てのひら)の傷
垂れ込める空の愛憎に
パチパチと感化されて
カラスアゲハのように
いくつもいくつも出港する錆びた舟
焼かれたウニの殻のなかの
スピッツベルゲン
さようならといって別れた灯台の下で
しだいに振った手はかじかんでいゆき
もう何もかも摑むことはできない
すぐそばに 海草のように捨てられている
生ぐさいしあわせ
お読みいただいた記念にランキングをクリックしてください。
人気blogランキングへ