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津軽の詩人・月永亜夢・初冬港 2012年6月28日_c0069380_131533100.jpg


津軽の詩人・月永亜夢の

「初冬港」という作品。

シュールでかわいた感性がいい。



   初冬港


もっとも沖を越えて この世の果てから

白金のカモメは打電してくる

せつなく稚い存在の歌をこめて すでに

凍っているいちまいの海


名づけがたく寒いものに囲まれて

焚火をする痛い情念の掌(てのひら)の傷

垂れ込める空の愛憎に

パチパチと感化されて

カラスアゲハのように

いくつもいくつも出港する錆びた舟


焼かれたウニの殻のなかの

スピッツベルゲン

さようならといって別れた灯台の下で

しだいに振った手はかじかんでいゆき

もう何もかも摑むことはできない

すぐそばに 海草のように捨てられている

生ぐさいしあわせ

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# by kitanojomonjin | 2012-06-28 13:26 | 津軽

神保町・東京堂 2016年6月27日_c0069380_16551144.jpg


神保町すずらん通りの東京堂が、リニューアルした。

通りに面して、どの階にも喫茶コーナーが出来て、

まるっきり本屋に見えない。


アメリカの街角を描く画家エドワード・ホッパーの

絵を思い出した。

「ナイトホーク」(よたか)というその絵は、

夜の街角のカウンター・バー。

そこに、一組のカップルが、ぽつねんと

座っている。

都会の孤独が身にしみる情景である。


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# by kitanojomonjin | 2012-06-27 17:03 | 旅の街角から

トタンの美の探求者「トタニスト」 2012年6月26日_c0069380_17442860.jpg

トタンの美の探求者「トタニスト」 2012年6月26日_c0069380_17444319.jpg

きょうの東京新聞に載っていた

「トタニスト昭和探訪」という記事。

『トタニスト』というのは、造語。

腐食したトタン建築に「美」を感じる

カメラマンの話。

赤さびや、色落ち、あるいは、継ぎはぎの

トタンは、現代アートのようだという。

この記事には、書かれていないが、

いち早くトタン建築に注目したのが、

『考現学』で知られる今和次郎。

関東大震災のとき、今和次郎は、

焼け出された人々が、瓦礫の中から

トタン板などで造った仮説の住宅に

関心を示し、詳細にスケッチを残している。

それだけではない。

「バラック装飾社」という会社をつくり、

トタンなどのバラック建築を

ペンキで装飾する仕事を請け負っている。

初代の「トタニスト」といってもいいだろう。


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# by kitanojomonjin | 2012-06-26 18:10 | 旅の街角から

津軽の詩人・月永亜夢・ぼくの悲しみは 2012年6月23日_c0069380_16383531.jpg


津軽の詩人・月永亜夢の

「ぼくの悲しみは」という作品。

擬人化された「悲しみ」が、

現われては消える。


    ぼくの悲しみは

ぼくの悲しみは ぼくの知らない場所から

傷ついた風に引かれてやってくる

月の明るい夜の入口をひき裂いて

ぼくの側に忍びよってくる 定かならぬもの

わけのわからぬ不意の形

あふれる微熱 悲しみ 心の

貧しさにも似て 貧しさとはまるで違うもの

沈黙の井戸の底で

あやしく跳びはねる ぼくの存在 その鱗


ぼくの悲しみは ぼくの暗黒の宇宙のなかで

英雄のように誇り高い 不遜な太陽で

最前線の兵士のように身を伏せ

破滅に脅えて幾度も燃え尽きる


ぼくの裏側だけから侵入し

微笑すら埋もれさすもの ぼくの悲しみは

偽りに満ちて 涙を拒み

幼児の寝息に 棲みついた蝶のように

距離のないところで ぼくから遠去かり

そしてぼくの不断の隣人としてさすらう 


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# by kitanojomonjin | 2012-06-23 17:21 | 津軽

飯塚監督の「まつる心」 2012年6月21日_c0069380_13291945.jpg


たまたま今朝、ラジオで飯塚俊男監督の

話を聞いた。

ドキュメンタリー映画の監督として40年近く

やってこられた飯塚さん。

なんといっても印象に残るのは、

「三内丸山遺跡」の発掘の様子を追った

ドキュメンタリー映画である。

飯塚さんの地に足を付けてじっくりと

対象に向かう姿勢には、いつも敬服している。


ラジオの最後のこんな言葉が、印象的だった。

「経済も重要だけれど

ひとびとが一緒になって『まつる心』も

負けないくらい大切だ」


生きにくい時代をいかに生きぬくか?

そのヒントがこのことばに、

こめられているような気がした。


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# by kitanojomonjin | 2012-06-21 13:37 | ドキュメンタリー