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その街の今は 2006年10月10日

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柴崎友香の「その街の今は」という小説を

読んだ。

大坂に暮らす30代近い女性の日常生活が

たんたんと描かれている。

主人公の勤めていた会社が倒産して、今は

喫茶店で働いている。

合コンで知り合った3歳年下の男性と

大阪の街を歩く。

そのときの描写がなかなか面白い。

ふたりが歩く脇を走り抜ける車やトラックを克明に

描く。

あるいは、彼のうしろの商店のガラスをよぎる

おばちゃんの影を克明に描写する。

これが、吉田修一だったら、その場は、大都会東京の

シンボリックな場であるのに、柴崎友香の場合は、

あくまでも、街の空間にこだわる。

まるで、姿を変えていく街の存在だけが確かなものであって、

そこに漂う人間は、いかにも頼りなげであるようだ。

さらに、主人公の女性は、やたら大阪の古い写真にこだわる。

それも、古道具市で売られる白黒の写真。

どこのだれだかわからない家族が、

大阪の街に佇んでいる写真。

その先はない。

そんななかで、ぷつんとこの小説は終わる。

何なんだろう。

団塊の世代ジュニアのもつ独特の感性なのかもしれない。


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by kitanojomonjin | 2006-10-10 09:59 | カルチャー通信