山川草木に立つ・司馬さんの津軽路 2005年8月15日

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(雷雲・ブロギニストの散歩道から)

作家司馬遼太郎さんは、1994年1月と7月、2度
青森を訪ねられた。
お別れする時、青森空港まで見送りに行った。

「司馬さん、今度お見えになる時は、
ぜひ、りんごの花の咲く時においでください。」
わたしは、そんなお願いをした。

毎年、青森の桜の見ごろは、5月の連休のころである。
弘前公園の桜が、全国的に有名になっている。

しかし、地元の人間にとって、一年で一番いい季節は、
桜の賑わいが終わった5月中旬からのりんごの花の
季節だと思う。

りんごは、白くて可憐な花をつける。
けっしてハデではない。
農家の人は、田植えの準備や農作業に忙しい。
あまり注目されないこの時期、ゆっくり津軽路を
旅すると、北国のようやく遅い春が来たと言う実感が
ひしひしと伝わってくる。

そのとき、司馬さんは、「そうですか」といって遠くを
見つめるまなざしをされた。

それから2年後、突然の病で、司馬さんは亡くなられた。
時々、「そうですか」という司馬さんの表情を思い出す。

司馬さんの旅の流儀は、とにかく現場に立つことだった。
「たとえ廃墟になっていて一塊の土くれしかなくても、
その場所にしかない天があり、風のにおいがあるかぎり、
かつて構築されたすばらしい文化を見ることができるし、
動きつづける景色を見ることができる。」

「山川草木のなかに分け入って、ともかくも立って見ねば
ならない。」

今も、司馬さんは、その場の風を感じるため、日本のどこか
世界のどこかを歩き回っておられるような気がしてならない。


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by kitanojomonjin | 2005-08-15 11:13 | 司馬遼太郎さんの津軽路 | Comments(0)