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藤森照信の新説「懐かしい」は縄文時代から? 2005年6月7日

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藤森照信の「人類と建築の歴史」という本を
読んだら、とても興味深い事が書いてあった。

「懐かしい」という感情は、縄文時代の定住が、
はじまってから人類に芽生えたものではないか
というのである。

そのくだりを紹介しよう。

 「漁期(秋の鮭の)が終わって獲物を背に岐路につき、
  峠の上から村の光景を望んだ時の気持ちを想像して
  みよう。
  自分が修学旅行や夏休みの休暇で長期に家を
  空けた時のことを思い出してください。
  懐かしいと思う。どうしてそう思うのか。」

峠から望む光景は、黒澤の映画の1シーンを
連想させるほどこれも懐かしい。
ところで、藤森照信は、ここでグイと本題に入る。

  「懐かしいという心の働きは、喜怒哀楽の感情とはちがう
   不思議な感情で、人間にしかない。
   犬は古い犬小屋を振り返ってシミジミするような
   ことはしない。」

古い犬小屋を見て、シミジミする犬も、広い世間には
いるかもしれないが、それにこだわるとわき道に
それるので、先へ進もう。
藤森は、ここから一気に、極めて本質的な結論へ導く。

   「その時、自分の心の中では何が起きているんだろう。
   おそらくこうなのだ。久しぶりに見た家が昔と
   同じだった事で、今の自分が昔の自分と同じことを、
   昔の自分が今の自分まで続いていることを、
   確認したのではあるまいか。
   自分はずっと自分である。
   人間は自分というものの時間的な連続性を、
   建物や集落の光景で無意識のうちに確認して
   いるのではないか。
   新石器時代の安定した家の出現は、人間の
   自己確認作業を強化する働きをした。」
   
   「このことが家というものの一番大事な
   役割なのかもしれない。」
   
藤森照信は、こんなユニークな発想で建物の歴史を
考えている。


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by kitanojomonjin | 2005-06-07 10:02 | 縄文